初夏を迎えた博麗神社。
 例年より活発な妖精達の働きのせいで、境内は旧地獄の底を彷彿とさせる程の暑さになっていた。
 そんな中、博麗神社の巫女、博麗霊夢はその地獄の淵に腰掛け、額に汗を浮かべながら一心不乱に錆び付いた刃物を何かに向かって突き立てている。

  霊夢 「もう、全然切れないじゃないの。何よこれ!」
  紫  「そんなやたらめったらに振り回したら危ないわ」

 古い妖怪――八雲紫(やくもゆかり)は苛立つ霊夢を諭し、同じように縁側に腰掛けて青々しい空を眺めた。
 この二人は今、赤い糸で繋がれている。比喩ではない。半透明の赤い糸によって実際に結び付けられているのだ。誰かの悪戯でもない。ふと気が付いたら小指から赤い糸が垂れ下がっていて、手繰り寄せればその先に付いていたのはあろうことかこのスキマ妖怪であった。

  霊夢 「あーあ。今日は掃除が終わったら洗濯して、買出しして、靴も新調しようと思ってたのに」

 霊夢は小さくため息をついて汗を拭うと、冷たい飲み物を取るため神社の中に戻ろうとした。
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